b-41 (かわいい娘が霊界で元気に生きているとわかって) 

 ある日、ミリアムという名の、ひどく取り乱した女性が電話をかけてきて、わたしに助けを求めました。幼い娘が輸血を受けたあとエイズで亡くなったというのです。「あの子が無事だとわかるまでは、とても生きてはいられません」と彼女は言いました。ちょうどキャンセルが出たところだったので、わたしはそこに彼女の予約を入れることができました。
 やがて訪ねてきたミリアム・ジョンソンは、霊媒というものを詳しくは知らないのだと言いました。今は藁にもすがる思いで、誰であれ、ほんのかぼそい光明でも照らしてくれればこんなありがたいことはない、というのです。わたしは彼女をすわらせ、わたしの仕事について詳しく説明しました。彼女は少し不安そうでしたが、わたしが危険人物でもペテン師でもないとわかると、緊張がほぐれてセッションを受け入れられるようになりました。
 わたしはいつものように祈りを唱えてからリーディングを始めました。数分ほどして、わたしの頭のなかにかすかなささやき声が聞こえてきました。
 「あなたのお嬢さんがいらしでますよ。長い栗色の髪に明るい緑色の瞳。笑顔がなんとも愛らしい。ちょっとはにかみ屋さんのようですね」
 ミリアムは目に涙をためながら言いました。「あの子ですか? 本当にあの子が来てるんですか?」
 「そうよ、ってお嬢さんが言ってます」
 「でも、わたしにはわからない。つまり、あの子が何か確かなことを言ってくれないことには」
 「ベシーという名前を教えてくれました」
 ミリアムはこらえきれなくなって泣きだしました。「ええ、あの子のニックネームです。いつも娘をベシーつて呼んでました。本名はエリザベスなんです」
 「奇妙だな……わたしにはよくわからないものを彼女が持っています。ちょっと待ってください。ああ、お嬢さんはぬいぐるみを持ってましたか?」
 「はい、あの子の部屋に」
 「あなたからぬいぐるみをもらったと言ってます。待って!わたしに見せてくれていますよ。なるほど、赤いポニーみたいだ。どうです、心当たりは?」
 「さあ、赤いポニーのぬいぐるみをあげた覚えはないんですけど。あの子のおもちゃのなかにあったかもしれませんが、わたしは思いだせません」
 そこで、ぬいぐるみについてもう少し詳しく教えてほしいとテレパシーでベシーに頼みました。しばらくしてわたしは口を開きました。
 「ベシーがわたしに病室を見せています。あなたが赤いポニーのぬいぐるみを持ってその病室に立っていますよ」
 ミリアムは不意にひらめいたようです。
 「まあ、そうよ、そうだわ。ジョンと一緒にぬいぐるみを買っていったんだった。あの子は病院にいるあいだ、ずっとそれを放さなかったんです。すみません、すっかり忘れていて」
 「いいですか、あなたのお嬢さんはとても聡明で、明らかにひとつの使命を持ってこの世にやってきたんです。彼女のエネルギーも生に対する熱意も実にすばらしい。まさかこんなに幼くして亡くなるなんて、きっと想像もしてなかったことでしょうね」
 ミリアムは大きくうなずくと、目をぬぐって涙を拭いた。
 「ベシーはキャンプの話をしています。彼女がキャンプに行ったことは覚えていますか?」
 「ええ、去年の夏でした」
 「レインディアというような名前では?」
 「いえ、キャンプ・レイニアでした」
 「よく似た音ですね。お嬢さんはメダルを見せています。リボンのようなものが付いている。これはなんだかわかりますか?」
 「はい」ミリアムがあえぎ声を洩らしました。「あの子はメダルを取ったんです。わたし、ちょうどそれを見たばかりでした。ボート漕ぎでもらったんですよ。ボート漕ぎのチャンピオンになったんです」
 「ええ、今朝あなたがそのメダルを箱から出したとき、ベシーも一緒に寝室にいたそうです」
 ミリアムにはとても信じられないようでした。
 「ジョンによろしく伝えてほしいそうです。それから、あなたの決断に賛成だ、と。申しわけないですが、これがどういう意味なのかわたしには見当がつきません」
 またもやミリアムの目に涙があふれました。彼女はわたしをじっと見つめました。「わたし、ジョンのプロポーズを承諾したところなんです。ただ、ベシーが納得してくれるかどうか自信がなかったんですよ」
 「いいわよ、って彼女は言ってますよ。病院で息を引き取ったときに、ジョンがかがみこんで額にキスしてくれたそうです」
 このほかにも信じがたい証がいくつか示されたあと、わたしは何か質問はないかとミリアムに尋ねました。
 「はい。わたしが向こうへ行ったとき、あの子は天国にいるんでしょうか?」
 その瞬間、あまりにも美しく、愛に満ちた感情が幼いベシーから送られてきました。彼女は母親に伝えてほしいと言ったのです。あたしはただいるだけじゃなくて、ママを迎えにいって天国まで案内してあげるわ、と。
 やがてセッションは終了しました。ミリアムは晴れやかな笑顔を浮かべていました。彼女はわたしに抱きつき、感謝の言葉もないと言いました。かわいい娘が今も無事で元気に生きているとわかって、これでやっと新しい人生を始めることができる、と彼女は実感したのです。絶望に打ちひしがれていたミリアムが歓喜にあふれる女性になったのです。

  ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.131-134






 b-42 (あなたに心からの愛を伝えている男性がここにいます)

 わたしの仕事上の喜びは、死後生存という真実を人びとに知らせるだけでなく、その過程でわたし自身が人びとの奇跡的ともいえる輝くばかりの変化に立ち会える、という点にあります。次にご紹介するのは、会席者が永遠の愛を確認した最も感動的なセッションのひとつです。
 わたしに霊から情報が伝えられてもその意味がすぐには会席者に理解できない場合がたくさんあります。トムという青年のリーディングのときもそうでした。わたしが彼のエネルギーに同調していくと、やがて、彼の右隣りにやはり若い青年が立っていることに気づきました。その青年は死の状況を細かく語りはじめたが、もちろん、わたしは事前に何も知らされてはいませんでした。
 「あなたに心からの愛を伝えている男性がここにいます。あなたの右側に立っていますよ。青い目に茶色い髪、それに、顎ひげを生やしている。彼はかなり若死にでした。本当はもっと長生きするはずだったらしい。ふうむ……この男性に心当たりがありますか?」
 「はい、たぶん」とトムが答えました。
 「麻薬でもやっているような、そんな朦朧とした感じが伝わってきます。苦痛を和らげるための薬物、モルヒネのようなものでしょう」
 「ええ、そのとおりです」
 「呼吸も苦しかったようだ。酸素吸入を受けなければならなかったんですね。とても体が弱っている感じがします。エイズの症状に似た感じです。どういうことかわかりますか?」
 トムは泣きはじめました。「はい、よくわかります。彼はエイズで死にました」
 「あなたを愛している、いつまでもそばにいるから、と言ってますよ。今でも一緒だということをなんとかあなたに伝えようとしてきたけれど、あなたには彼が見えない。それがもどかしくてたまらないそうです。あなたが昇進した話をしていますよ」
 「ええ、まあ、その可能性があると、上司から今日言われたばかりです」
 「お友達は笑ってますね。お前が昇進できるようにぼくが手を貸してやったんだ、って言ってますよ。これでひとつ貸しだからな、って」
 トムが笑い声をあげました。
 「ゲイリーという名前をご存じですか?」
 「彼の名前ですよ!」
 「何か表の庭について話しています。あなたが花を植えたがっている、と。おや、彼自身が芝生に水をまいていますね。あなたの花の選びかたがよくない、といったようなこと言っています。どういう意味か、おわかりですか?」
 「ええ。先週、苗木屋に行って、表の庭に植える花をいくつか買ってきたんですよ。家には持ち帰ったんだが、まだ植えてないんです」
 わたしは思わず尋ねました。「それはどうして?」
 「家に帰って、ほかの花と並べてみたら色が合わなかったんです。あの苗木は返してこなきゃいけないな。ゲイリーは庭に関しては好みがやかましくて、毎日、自分で水をやってました。色の合わない花を植えたりしたら絶対にゲイリーがいやがるだろうって、そう思ったんです。ほかの色と合わない花を植える気にはなれなかった。だって、ゲイリーがいやがるでしょうからね!」
 「そのとおり、って本人が言ってますよ」
 わたしとトムは声をあげて笑いました。
 「あなたはガレージで箱の中身をいろいろ調べていたそうですね。彼がアルバムを見せています。これはおわかりですか?」
 「はい。確かに今週、それをやってました。引っ越しを考えていて、持っていくものと処分するものを選り分けたかったんです」
 「あなたが家の売却についてすでに誰かと話をしているとゲイリーが言ってます。あなたは現在の住居の裏手の家をずっと見ていた、と」
 「さあ、どういうことかな」
 「そのうちわかる、とゲイリーは言っています。彼は、二個のハートが組み合わさったようなものをわたしに示しています。思い当たる品物が寝室にありませんか?」
 トムにはこのハートの意味がわかりませんでした。頭のなかで家じゅうを捜してみるのですが、わたしの描写にあてはまるものが思い浮かばないのです。わたしはあとでわかるかもしれないからとトムに言いました。
 「おまえを心から愛している、とゲイリーがあなたに伝えてほしいそうです。これからもずっとこの愛は変わらない、と。いつもあなたのそばにいるから、と言ってますよ」
 トムもゲイリーに愛してると伝え、今でもそばにいてくれるとわかって幸せだと言いました。
 「そばにいることをあなたに知らせるために、そのうちサインを送ってくれるそうですよ」
 「それはすごい。待ちきれないな」
 こうしてセッションは終了しました。このセッションのおかげですっかり心が安らいだとトムは言ってくれました。語られたさまざまな事柄を通して彼はゲイリーの存在を確かに感じたのです。彼はわたしに礼を言って帰りました。

 それから四カ月後、トムがふたたび訪れ、驚くべき出来事を話してくれました。わたしのリーディングを終えて帰宅したトムは録音テープをしまい、それきりセッションについて何も考えなかったそうです。三週間後、ゲイリーが言っていたとおり、彼の昇進が実現しました。トムはさらに説明してくれました。「同僚がカードを二枚くれたんです二枚は昇進祝いのカードでした。で、彼女が『とっても奇妙なことがあったのよ』って言うんですよ。カード・ショップを出ようとしたとき、別のカードの前で足が止まって、どうしてもこれを買わなきゃって気分になったそうです。彼女にはその理由がさっぱりわからなかったけど、とにかく、そのカードをぼくに渡さなければいけないと思った。ぼくがそのカードを開くと、そこにふたつのハートが組み合わさった絵柄があったんです。メッセージが印刷されてました。『愛してる』(アイ,ラヴ,ユー)って」
 トムはそのカードに見覚えがあったので、家に帰ると、ゲイリーから送られた手紙やカードの詰まった箱を片っ端から調べたそうです。そして、例のカードの意味がわかりました。どの手紙にもまったく同じサインがしてあったのです。∴、してる……ゲイリー≠ニ。

  ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.135-139






 b-43 (亡くなった息子と霊界でも一緒にいるガールフレンド) 

 次のリーディングでは依頼人の物の考えかたが一変しました。繰り返しになりますが、誰が現われ、何が伝えられてもわたしはいっさい関知していません。この場合、依頼人が予想もしていなかった人物が現われて、わたしには驚異としか思えない情報を伝えたのです。その夫婦ヴィヴィアンとポール・ストラウスがわたしの前にすわっていました。ふたりが懐疑的だということは一見してわかりましたので、わたしはすぐにリーディングに取りかかりました。

 「さて、あなたがたが誰との交信を望んでいるか、もちろんわたしは知りませんが、ひとつお訊きします。娘さんを亡くしていませんか?」
 ふたりは不思議そうに顔を見合わせてからわたしのほうに向き直りました。ヴィヴィアンが答えました。
 「いいえ。でも、どういうことでしょうか?」
 「若い娘さんが来ているんです。二十歳ぐらいで、あなたがたのそばに立っています。残念ながら、名前がよくわかりませんね。待ってみましょう。そのうち、教えてくれるかもしれません」
 数分が流れました。
 「ヴィヴィアン、あなたのお母さんに関係のある老婦人がここに来ています。シカゴの話をしてるんですが?」
 「はい、それは祖母ですわ。わたしの母の母にあたる人です。シカゴに住んでました。祖母はなんて言ってるんです?」
 「お祖母さんはあなたのお母さんの心配をしていますね。お母さんは目に病気があるか、あるいは、眼科の予約を取りませんでしたか?」
 ポールが落ちつかない様子で体を動かしました。この情報が気になったらしく、彼が代わって口を開きました。
 「そのとおりですよ」
 「あなたはお母さんとうまくいっていないようですね――つまり、お母さんと口をきいていない。こう言いなおしましょう。お母さんはちょっと癖のある人で、ついついあなたたちは喧嘩になってしまう。この意味がおわかりですか?」
 ふたりにはわたしの言葉が信じられなかったようです。わたしはこの家庭の状況を的確に言い表わしたのでした。
 「ええ、わたしは母とそりが合わないんです。なんとかうまくやっていきたいとは思うんですけど」とヴィヴィアンが言いました。「気楽におしゃべりできるような人じゃなくて」
 「あなたのお祖母さん、つまり、お母さんのお母さんですが、ぜひお母さんに優しくしてやってほしいと言ってますよ。もつと理解してやってほしい、と」
 ふたりはうなずいたので、わたしは先を続けました。
 「このご婦人が心からの愛を伝えています。ポールとは誰のことですか?」
 「わたしの名前ですが」とポールが言いました。
 「いえ、同じ名前で、すでに霊界にいる人物です」
 ヴィヴィアンとポールが互いに顔を見合わせました。ふたりの目にみるみる涙があふれてきました。
 「ああ、あなたがたの息子さんだそうですよ。間違いありませんか?」
 「はい、確かに」
 「ポール、息子さんが言っていることをそのまま伝えますよ。あなたはもつと自分の健康に気を配らなければいけない。息子さんがとても心配しています。あなたは彼の死をいまだに引きずっている。ずっと悲しみに浸ったまま、そこから出ようとしていない。それはあなたの健康を蝕んでいきます。外に出て、何かほかのことをしなければ。植物はお好きですか?」
 「はい」
 「表の庭に花を植えてほしいと息子さんが言ってますよ」
 「ついこのあいだ、そうしようかと思ったところです」
 「息子さんがあなたの頭にその考えを吹き込んだんです」
 ふたりは呆然とした表情でわたしを見つめました。情報の正確さに感動し、わたしの言葉のひとことひとことに聞き入っているのです。
 「これは大変奇妙なことに聞こえるかもしれませんが、息子さんがぜひ伝えてほしいと言っています。彼には向こうでガールフレンドがいるそうですよ」
 ヴィヴィアンが顔に両手を当てて泣きだしました。
 彼女がつぶやくようにこう言ったのです。「ええ、そうなんです。彼女は元気ですか?」
 わたしにはどういうことか理解できなかったので、このメッセージの意味を明らかにしてほしいとふたりに頼みました。
 「つまり、現世でガールフレンドだった女性も亡くなってるんですか?」
 「ええ、息子が死んで数カ月後に。わたしたちにとっては娘も同然なんです」とヴィヴィアンが説明してくれました。
 「なんてことだ。とても信じられない」とわたしは答えました。「今はふたり一緒にいるんだと彼女が言ってます。ああ、そうだったのか、セッションの最初に現われてくれた娘さんですよ」
 夫婦はうなずいて同意しました。リーディングはさらにしばらく続きました。わたしは彼らの息子の特徴や死の状況を伝えました。
 「なるほど、息子さんはちょっと奔放なタイプなんですね。なかなか身を落ちつけられなかった。今はこの娘さんと一緒だが、でも、彼は相当のプレイボーイだったようだ」
 「はい、そのとおりです。女友達が大勢いました。少なくとも、本人がそう言ってました」
 「彼は音楽が好きだったらしい。ガレージにあるギターについてはご存じですか?」
 ポールが答えました。「はい、ちょうど見てきたばかりです。ポールはバンドで演奏したがってました。いつも練習してたんですよ」
 「家に帰ったら見てほしいとポールが言ってます。二番めの弦が切れてるそうですよ」
 ポールにはわかりませんでしたが、あとで確かめてみると言いました。
 「車のことも何か言ってますね。お宅にピックアップ・トラックはありますか?」
 「はい」
 「彼は新しいタイヤについて言ってます。新しいタイヤを買うとか、新しいタイヤが必要だというようなことは?」
 わたしは目の前の男性が心臓発作で倒れるのではないかと思いました。顔が蒼白になったのです。
 「先週の金曜日にタイヤを替えたばかりです」
 「ヘッドライトも点検したほうがいいと言ってます。交換しないといけないらしい」
 「驚いたな、わたしも昨日の夜、それに気がついたんですよ」
 夫婦はただ唖然とするばかりでした。
 「息子さんはかなり急死だったようですね。頭がとても妙な感じです。ドラッグで朦朧としたような感じだが、でも、死因は麻薬の中毒ではない。むしろ、体の内側に関係している。彼は長く苦しまなくてすんだとしきりに言ってます。それがうれしかった、と。何か、血液に異常があったんでしょうか?」
 「そうなんです!」
 「エイズだったんですか?」
 ふたりはまたもや泣きはじめました。
 「はい」
 「不思議だ。エイズにかかった人はたいてい長期間の闘病のすえに亡くなってるものです。でも、息子さんにはそんな様子がない。つまり、病気になってすぐ亡くなったような感じがします」
 「はい。エイズとわかって、一週間後に病院で亡くなりました。あっというまの死でした」と父親が答えました。
 「この若い娘さんもやはりエイズで?」
 「はい」今度は母親が答えました。
 「彼女があなたがたによろしく伝えてほしいと言ってます。それから、キャリーにも。誰のことかわかりますか? その人に愛と感謝を伝えたいそうです」
 「キャリーは彼女のお母さんです」
 「あなたがたを悲しませて申しわけないと息子さんが言っています。今は元気でやっている。いずれ音楽の演奏家になるそうです」

 ヴィヴィアンとポールは互いに手を取り合いました。ふたりの願い――新たな世界を見ること――それがかなえられたのです。息子を取り戻せないことはふたりにもわかっています。しかし、わたしを通して、息子があちら側の世界で生きているという確かな証拠を得たのです。彼らは癒やしのプロセスを順調に進みはじめました。その後、ヴィヴィアンと母親の関係はかなり改善されました。ポールは美しい花壇を作り、また、じっくり瞑想しながら、新しい観点から人生を考えはじめています。

  ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.140-146






 b-44 (霊界のボーイフレンドからの愛のことば) 

 わたしはカリフォルニア州サンバーナーディーノにある女性の自宅でグループの交霊会に参加していました。三人の出席者のリーディングを終えたあと、ソファにひとりですわっていた若い女性に声をかけました。彼女の名前はローリーでした。そして、三十分ほどかけて彼女の祖母からのメッセージを伝えました。家族の持ち物の描写や、祖母の品物が家のどこにあるか、といった内容でした。
 そろそろリーディングを終えようとしたとき、若い男の霊が現われ、ローリーのすぐ隣りにすわったのです。彼は彼女の手を握っているようでした。そして、わたしに情報を伝えはじめました。

 「あなたのすぐ横に男の人が腰かけています。彼と会うために今夜あなたはここに来たのだと言ってますよ。心当たりがありますか〜」
 ローリーは今にも失神しそうに見えました。顔が真っ青になり、必死に涙をこらえています。
 彼女の唇がやっと開きました。「はい、彼はここに来ているんですか?」
 「この男の人はあなたを愛していると言ってます。それから、すまなかった、と。自分の行動を悔やんでいます」
 ローリーは涙をぬぐい、うれしそうな笑みを見せました。
 「名前のイニシャルはMだそうです。最初がM、そして、最後がY」
 「ええ、そうです。彼の名前はマーティーです」
 「あなたのボーイフレンドだったんですか?」
 「はい」
 「何か問題があったようですね。あなたに対して正直ではなかったと彼が言ってます」
 「わかってます。もういいんです。本当にかまわないからと彼に伝えてください」
 そこで、わたしは、自分自身で気持ちを伝える方法があるし、いちいちわたしを通さなくても交信はできるのだとローリーに説明しました。
 「どうやらマーティーはタフガイのようですね。ユーモアのセンスも優れている。でも、少しひねくれたところがあるようだ。この意味がわかりますか? とっぴなことを言うもんだから、人から誤解されやすいんですね」
 ローリーがそのとおりだと言いたげににっこりと笑いました。彼はしばしば自分のおしゃべりで人を唖然とさせていたというのです。
 「あなたと一緒に暮らすつもりだったのに、それができなかったと彼が話しています。何か障害があったようですね。あまりに大勢の人間がじゃまをしようとした、と彼は言ってます。どうです、わかりますか?」
 「ええ、わたしの母がマーティーを嫌っていて、わたしたちの同棲に反対でした。わたしたちが引越しの話をしていると、いつもやかましく騒いだものです」
 「マーティーは理解してくれてますよ。彼にはいかがわしい過去があったが、あなたに助けてもらって立ちなおったそうです。不良仲間とのつきあいがあったようですね」
 ローリーがうなずきました。
 「彼は麻薬に深く依存していたらしい。それが原因で感染したんですね――注射針を共用したためだ。そのことについてはご存じですか?」
 「知りません。彼は何も話してくれませんでした。でも、たぶん、そうだと思います。わたしと出会う前の彼は本当にひどかったんです」
 「あなたに会えたことが自分の人生で最高の出来事だったと彼は言ってますよ。ちょっと皮肉ですね。彼は婚約の話をしている。あなたがたは結婚する予定だったんですか?」
 ローリーの目にまた涙があふれてきました。
 「その話はしてました。彼が結婚したいと言ったんです。日取りの相談もしていました」
 「婚約指輪について彼が口にしています。あなたのために自分で選んだ、と」
 ローリーがわっと泣きくずれました。数分後、彼女は首のチェーンに通したダイヤの婚約指輪をわたしたちに見せてくれました。
 彼女は涙で顔を濡らしながら説明しました。「彼のお母さんがこの指輪を見つけたんです。
 わたしの名前が書かれた手紙と一緒に。これをわたしに渡すつもりでいたその日に彼は亡くなりました」
 部屋にいた全員がいっせいに息を呑みました。わたしは数分おいてから、さらに情報を伝えました。
 「いろいろ世話をしてくれてありがとう、とマーティーが言ってますよ。食事や入浴の世話をなさったんですか?」
 「ええ、看護しました。ほかの人は彼に関わるのをいやがってましたから。わたしは気にしませんでした。あの人を愛してましたから」
 「あなたは本当に優しい方だ。あなたは霊に試されていたんですよ。その試験に合格したんです」

 リーディングが終わるまで、マーティーは、ローリーのおかげで立ちなおれたこと、病気のあいだ面倒を見てもらったことに感謝を示しつづけました。彼は今でも彼女を愛していると懸命に訴えていたのです。ローリーは亡くなった恋人の霊との対話を信じてはいましたが、その態度はまだ控えめでした。やがて、わたしのエネルギーが衰えてきて、今夜の交霊会はそろそろ終わりにしなさいとわたしのガイドたちから指示されました。
 わたしは会席者たちに礼を言うと、ローリーに向かって伝えました。「マーティーが、さよなら、ベイビー、と言ってますよ」
 いきなりローリーが立ちあがって金切り声をあげました。わたしがだいじょうぶかと尋ねると、彼女は大声で叫んだのです。「昨日の夜、わたしはマーティーのことを考えながら、彼にこう言ったんです。『もしこの霊媒という人が本物なら、そのときは絶対に来てちょうだい。そして、わたしのニックネームを呼んで』って。わたしのニックネームはベイビーなんです!」
 これを聞いてわたしたちは一様に声を呑み、霊と愛の力に驚喫したのでした。

  ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.147-151